2012年度は,動いている物体をも対象とした動的なプロジェクションマッピングをキーワードに研究を行った.カメラやプロジェクタには遅延が存在することが知られているため,これらを打ち消して高精度な映像投影の実現を目指した.また,プロジェクションマッピング時にネックとなるプロジェクタキャリブレーションを,簡単かつ高精度に実現し,kinectを組み合わせることで,プロジェクタを向けるだけでマッピングが実現される基礎環境を構築した.その他,着せ替えシミュレータや透過ディスプレイ,バルーンディスプレイなどの開発を行った.

○修士論文
動作する人物へのプロジェクションマッピング

○卒業論文
バーチャル試着を手軽に実現するDressCapture
遅延を補償する予測投影を用いた動物体へのプロジェクションマッピング
安価な深度センサを用いたプロジェクタキャリブレーション
実オブジェクトの動的透過による空中投影システム
ProCamシステムを用いた高精度な映像投影手法の検討
高解像度なバルーン型ディスプレイの開発
異なる複数台のプロジェクタを用いた高解像度な映像投影手法の提案

○共同研究(宇都宮大学・佐藤研究室)
■高階調表示に適した輝度差の検討
■動的輝度補正を付加したプロジェクションマッピングの検討
■動的対象物へのインタラクティブな映像投影の検討

 

2011年度 研究成果一覧
2010年度 研究成果一覧
2009年度 研究成果一覧
2008年度 研究成果一覧
2007年度以前の研究成果一覧

電通大以外での研究活動.(佐藤研@東工大


 動いている実物体へのプロジェクションマッピングの一例として、動作する人物を対象とした投影技術の構築を行いました。実際の映像から衣服データを作成し、これまで開発してきた輝度補正技術を用いて、実際の服の色情報を打ち消しながらバーチャルな着せ替えを実現しました。近年のAR技術のようにディスプレイを介さなくても、肉眼で直接体験できる点が最大の特徴です。映像投影においては、Kinectによって人体の動きをリアルタイムに計測し、そのデータから動きを予測することで、人物と投影像のズレを最小限に抑え、違和感のないマッピングを実現しています。[Top]

【文献】Takuma Nakamura,Akio Watanabe,Naoki Hashimoto,“Dynamic Projection Mapping”,Proc. of ACM SIGGRAPH2012,Full Conference DVD-ROM (2012).

 より簡単に着せ替え体験を可能にするために、Kinectを使ったバーチャル試着システムを構築しました。衣服データの生成は、Kinectがあれば簡単に行えるように設計し、自分の持っている衣服をデータ化しておいたり、他のユーザと衣服データを共有して楽しんだりすることを想定しました。 Kinectによる骨格認識機能を利用して、データ化した衣服をリアルタイムで体験者の姿勢に合わせてディスプレ上に重畳表示することで、まるで自分がバーチャル衣装を着ているかのような体験ができます。立ち位置を変えたり、姿勢を変えたりするような、試着時特有の動きにも対応した衣服の着せ替えが可能です。[Top]

【文献】川口侑希子,橋本直己,“バーチャル試着を手軽に実現するDress Capture”,映像情報メディア学会技術報告,Vol.37,No.7,pp.47-50 (2013).

 動いている対象に映像を投影するプロジェクションマッピングでは、各種処理遅延のために、投影対象と映像間に大きなズレが発生してしまいます.このズレを補償するために、本研究では対象の動きを予測して、投影映像を生成する技術を開発しています。高速度カメラから得られた映像を解析し、ズレに影響の大きい部分を重点的に予測し、これを最新のGPUを用いて並列実装することで、60fpsでの予測映像投影を可能にします。.[Top]

 プロジェクタを用いる場合には、その位置情報や投影パラメータを事前に計測する必要があります。定番の計測方法はありますが、処理が煩雑であり、毎回行うのは現実的ではありません。そこで本研究では、プロジェクタの上にKinectを取り付けるだけで、自動的に全ての計測を行い、1分程度で投影を可能にするキャリブレーション手法を開発しました。プロジェクションマッピングと組み合わせることで、準備に必要な時間を大幅に削減することが可能になります。[Top]

【文献】長岡亜耶,橋本直己,“深度センサを用いた手軽なプロジェクタキャリブレーション”,映像情報メディア学会技術報告”,映像情報メディア学会技術報告,Vol.37,No.7,pp.3-6 (2013).

 空中立体像投影を実現するために、あえて空中に映像を映す仕組みを考えるのではなく、既存の物体の表面に映像を投影し、背後が透過しているようにみせることで、なにもないところに映像が映し出されているようなエフェクトを実現することを目指しました。対象の周囲を4台のKinectで取り囲み、全ての3次元情報を取得し、同時に観察者の視点位置も計測することで、箱の後側に隠れた領域の色情報と3次元情報を獲得しています。これらを元に、表現したい仮想物体とその背景情報を生成することで、空中に浮かぶ仮想物体を具現化することに成功しました。[Top]

 これまで開発してきた輝度補正技術をさらに改善するために、今年度は、室内で映像を投影した際に生じる、壁からの間接反射光の変化に着目し、これを適切に推定することで、より高速で高精度な輝度補正の実現を試みました。投影映像と反射光は密接に関係しているため、反射光の正確な推定は困難です。そこで、簡単な近似モデルで間接反射光を表現することで、リアルタイムでの輝度補正を可能にしました。昨年までの成果と比較して、動画像等の変化する映像に対して、補正速度と精度が向上しました。[Top]

 触って押し込んで叩けるディスプレイとして開発しているバルーン型ディスプレイですが、近年度は映像の高解像度化に主眼をおいて開発しました。4台のプロジェクタを用いたマルチプロジェクション構成で、前年度のシステムの明るさと解像度を改善しました。バルーン自体も改良を施し、4台のプロジェクタを効率的に配置できるような構成を実現しました。プロジェクタ配置には、投影シミュレータを作成して事前検討を行い、実際のシステムにおける投影結果との比較検討を行いました。バルーン表面での歪み補正には、魚眼レンズを用いた半自動補正システムを実現しました。[Top]

【文献】渡邊礼二,橋本直己,“高解像度なバルーン型ディスプレイの開発”,映像情報メディア学会技術報告,Vol.37,No.7,pp.1-2 (2013).

 プロジェクタの用途として、大画面映像を投影することも重要ですが、一定の領域に高精細な映像を投影することも大切です(プロジェクションマッピングによるディジタルモックアップ等)。そこで本研究では,研究室に余っているプロジェクタを集めて,Super-Imposedプロジェクション技術によって高解像度な映像投影を目的としています。比較的自由に配置されたスペックの異なるプロジェクタからの投影映像の、画素単位でのズレ具合を利用して、スペック以上の高解像度提示を実現します。自由な配置を実現するため、投影面状でのボケを改善しながら高解像度化するのが特徴です。[Top]

【文献】小川智史,橋本直己,“異なる複数台プロジェクタの重畳投影による高解像度化手法の提案”,映像情報メディア学会技術報告,Vol.37,No.7,pp.7-10 (2013).